フランスワイン備忘録:ボルドーのメドック(Medoc)地区とは?

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今回のテーマは「メドック(Medoc)」

この記事は、2023年1月30日現在の情報を基にしています。

目次

ボルドー メドック地区とは?

メドックの地名は「真ん中の土地」を意味します。

これは大西洋とジロンド川の中間に位置するところからきています。

ジロンド川の左岸、ボルドー市の少し北から、大西洋の河口近くまでの細長い地域です。

川の上流が「オー・メドック」、下流が「メドック」と大きく2つに分れます。

地形は高低差が少なく(最大で 43m)、全般にフラットな風景が展開しています。

海洋性気候のため、寒暖差が少ない安定した気温、十分な雨量、長い秋といった特徴となります。

また、 背後にある林が、海の強風から葡萄の木を守ってくれます。

砂利質土壌がベースのため、カベルネ・ソーヴィニヨンが多く植えられています。

これにメルロ、カベルネ・フランと合わせた3品種が主に使われますが、カベルネ・ソーヴィニヨンを主体にしたブレンド(アッサンブラージュ)こそ、メドックのワインの個性です。

アロマが豊かで、バランスがよく、コクがあり、骨格がしっかりしていて、若いうちはタンニンに収斂性がありますが、 熟成するとエレガントで繊細なタンニンになります。

まさしく、長期熟成型のワインです。

ただ、“カベルネ・ソーヴィニヨンが多い=タンニン豊かなフルボディ”と必ずしも単純な構図ではありません。

カベルネが多くてもサンテステフであれば、ふくよかなバランスとなるものもあるし、メルローが多くてもポイヤックであれば、タンニンが強調されるものもあります。

すなわち、 品種の個性より、その土地の個性AOCがワインに大きく影響するのです。

尚、メドックでも白ワインはつくられていますが、白ワインに向かない風土のため、AOCはより広い地域の名称である「ACボルドー」になってしまいます。

クリュ・ブルジョアについて

赤ワインには、有名な「1855年の格付」があります(パリ万博に合わせ、当時の取引価格の 順に格付されたもの。

1855年以降、唯一1973年のムートン・ロートシルトの昇格を除いて、見直しされていません。

シラク農業大臣だった時に昇格が承認されました。

各付けに関しては、別の記事で詳細に解説します。

クリュ・ブルジョワの創設

また、1885年の格付にもれたシャトーが「クリュ・ブルジョワ」という格付(1932年創設)を創っています 。

定期的に見直しされており、2003年には省庁が認めた公式格付けとして新しい「クリュ・ブルジョワ」が誕生。

当時、計247の生産者が「クリュ・ブルジョワ」として認定されています。

しかし、認定から漏れた多くの生産者たちが審査団の公正性に疑問呈して、訴訟を起こしました。

そして、2007年にボルドー行政控訴院によって、2003年に決定された「クリュ・ブルジョワ」とそれを承認した省令を無効とする判断が下されたのです。

クリュ・ブルジョア認証

結果的に公式格付けでは無くなった「クリュ・ブルジョワ」ですが、組合員によって結成されたクリュ・ブルジョア連盟によって、格付けではなく「クリュ・ブルジョワ認証」という新しいかたちの「クリュ・ブルジョワ」がスタートします。

しかし、「認証」という価値がわかりにくく、ブランド性が打ち出せないと判断した有名シャトーが軒並み脱退。

また、新進気鋭のシャトーもクリュ・ブルジョワ認証に興味を持たないと言う状況に陥り、「クリュ・ブルジョワ」自体の存在意義が薄まっていきました。

こういった状況を受けて、2016年にクリュ・ブルジョワ連盟は、2020年までに3段階からなる新格付制度を導入することを発表。

そして2018年1月、ついに2018年ヴィンテージから、加盟するシャトーを三つのカテゴリーに格付けすることを発表するに至ったのです。

新たなクリュ・ブルジョワの格付け

2018年ヴィンテージから導入された「クリュ・ブルジョワ」の新たな格付けは、「クリュ・ブルジョワ・エクセプショネル」、「クリュ・ブルジョワ・シュペリウール」、「クリュ・ブルジョワ」の3種類で、5年間有効となる(初回は2018から2022年まで有効)。

メドックの8つのAOCを対象としている点は、2008ヴィンテージからの「クリュ・ブルジョワ認証」と変わらない。

しかし、これまでの認証が、ヴィンテージごとにワインを評価していたのに対して、新たな格付けでは、シャトーの実力そのものを評価する。

この結果、選ばれたのは249のシャトーである。

  • クリュ・ブルジョワ・エクセプショネル:14シャトー
  • クリュ・ブルジョワ・シュペリュール:56シャトー
  • クリュ・ブルジョワ:179シャトー

これは、メドックの8アペラシオンの生産量の約31%に相当する。

2020年現在250シャトーが格付けされています。
下記Les Cru Bourgeois HPからの引用です。

メドックの代表的なAOCについて

メドック地区は「オー・メドック」と「メドック」に大別されますが、より高級なワインを産み出すのは 「オー・メドック」の方です。

 「オー・メドック」の中でも、特に優秀な村(コミューン)6つは単独でAOCを名乗れます。

それは、下記の6つのAOCです。

  • サンテステフ
  • ポイヤック
  • サンジュリアン
  • マルゴー
  • リストラック
  • ムーリー

他の村で造られたワインのAOCは「オー・メドック」となります。

このうち有名な4つのAOC(サンテステフ、ポイヤック、サンジュリアン、マルゴー)は特に優秀なワインを産出しています。

この4つのAOCはジロンド川に面しています。

昔からメドックには「いいワインは川が見える畑から生まれる」という格言があります。

これは、川に近いほど、下記の条件が揃うからです。

  • 川からの輻射熱、寒暖の緩衝作用をたくさん受け、葡萄がよく熟す
  • 水はけが良いため、葡萄が水ぶくれしない、タンニンが凝縮する

それでは、4つのAOCの個性について解説します。

サンテステフ Saint-Estephe

ジロンド川の河口に一番近く、4つの中で一番広いAOCです。

粘土質が多いためメルロも適しており、メルロの比率も高めです。

ワインの特徴はかつて、豊富なタンニンが頑丈な骨格をもたらし「男性的」と言われてきましたが、最近では土壌に合わせメルロの比率も高まったことから、メルロのキャラクターである動物的、土っぽい香りや穏やかな酸とボリューム感がよく出た味わいのワインとなっています。

格付シャトーは2級2つ、3級1つ、4級1つ、5級1つ計5シャトー。

  • シャトー・コス・デストゥルネル(第2級)
  • シャトー・モンローズ(第2級)
  • シャトー・カロン・セギュール(第3級)
  • シャトー・ラフォン・ロシェ(第4級)
  • シャトー・コスラボリ(第5級)

格付シャトーは少ないですが、クリュ・ブルジョワ級に良質なものがあります。

地域が 広いため、比較的品質にバラツキもありますので、良いシャトーを選んだ方がいいでしょう。

ポイヤック Pauillac

サンテステフの隣のAOC。

砂利質土壌が最も多く、カベルネ・ソーヴィニヨンの特徴が特によく表現される土地です。

すなわち、タンニン豊富なフルボディながら酸により引締った味わいで、 余韻が長く、エレガントで長期熟成タイプのワイン。

まさにボルドーを象徴するワインがこの土地から生まれます。

このAOCが1級シャトーの過半を占めているのは頷けます。

格付シャト ーは1級3つ、2級2つ、4級1つ、5級12つの計18シャトーと多いですが、並びは“両極端” です。

【一級】

  • シャトー・ラフィット・ロートシルト
  • シャトー・ラトゥール
  • シャトー・ムートン・ロートシルト

【二級】

  • シャトー・ピション・ロングヴィル・バロン
  • シャトー・ピション・ロングヴィル コンテス・ド・ラランド

【四級】

  • シャトー・デュアール・ミロン・ロートシルト

【五級】

  • シャトー・ダルマイヤック
  • シャトー・オー・バージュ・リベラル
  • シャトー・クロワゼ・バージュ
  • シャトー・ランシュ・バージュ
  • シャトー・クレール・ミロン
  • シャトー・ポンテ・カネ
  • シャトー・ランシュ・ムーサ
  • シャトー・ペデスクロー
  • シャトー・バタイエ
  • シャトー・オー・バタイエ
  • シャトー・グラン・ピュイ・ラコスト
  • シャトー・グラン・ピュイ・デュカス

ここも、高名なアペラシオンの名前に振り回されることなく、良いシャトーを選んだ方が いいでしょう。

また、1級シャトーのセカンドは、かなり高品質です。

サンジュリアン Saint-Julien

ポイヤックの隣のAOC。

土壌は砂利質と粘土質の混ざり方が均質で、味わいのバランスが良いため、「バランスのサンジュリアン」の異名を持っています。

また、果実味の豊かさが特徴的です。

酸もありますが、ポイヤックほどスマートではありません。

サンジュリアンでは北部と南部でワインの性質が少し異なり、南部は酸がしっかりしているタイプとなります。

また、内陸の方が、強いボディになりがちです。

格付シャトーは2級5つ、3級2つ、4級4つ計11シャトー。

【二級】

  • シャトー・デュクリュ・ボーカイユ
  • シャトー・グリュオ・ラローズ
  • シャトー・レオヴィル・ラスカーズ
  • シャトー・レオヴィル・バルトン
  • シャトー・レオヴィル・ポワフェレ

【三級】

  • シャトー・ラグランジュ
  • シャトー・ランゴア・バルトン

【四級】

  • シャトー・ベイシュベル
  • シャトー・ブラネール・デュクリュ
  • シャトー・サン・ピエール
  • シャトー・タルボ

級のバラツキが小さく、格付シャトーの比率が一番高いAOCです。

“ハズレ”が比較的少ないこと、ワインも若い時からバランスが良いため、「レストランのAOC」とも言われています。

マルゴー Margaux

4つのAOCで一番上流域、南に位置する村。

一般に「女性的」と言われますが、広いAOCなので個性はバラエティに富んでいます。

上部が砂利質、下部が粘土質という土壌構成から、優しくまろやかな果実味と味わいの後半にしっかりした渋みを感じるタンニンのあるワインが生まれます。

格付シャトーは1級1つ、2級5つ、3級10つ、4級3つ、5級2つ計21シャトー。

【一級】

  • シャトー・マルゴー

【二級】

  • シャトー・ローザン・セグラ
  • シャトー・ローザン・ガシー
  • シャトー・デュルフォール・ヴィヴァン
  • シャトー・ラスコンブ
  • シャトー・ブラーヌ・カントナック

【三級】

  • シャトー・キルヴァン
  • シャトー・デイサン
  • シャトー・ジスクール
  • シャトー・マレスコ・サン・テクジュペリ
  • シャトー・カントナック・ブラウン
  • シャトー・ボイド・カントナック
  • シャトー・パルメ

格付シャトーが一番多いのですが、2級、3級シャトーを中心にかなり品質が低下しているシャトーもあります。

1級のシャトー・マルゴーが卓越して素晴らしく、1に『シャトー・マルゴー』、 2が無くて、3に『シャトー・パルメ』、その他もろもろ”といった様相を呈しています。

おすすめのワイン

品種表記:カベルネソーヴィニヨンCS、メルロM、カベルネフランCF、プティヴェルドPV

2012年 CHÂTEAU LE BOSCQ シャトー ルボスク( M60%、CS40%)
名門ラパリュ家が手掛けるクリュ・ブルジョワワイン

13年 CHÂTEAU LILIAN LADOUYS シャトー リリアン ラドゥイ(M55%、CS40%、CF4%、PV1%)
2003年にシュペリュール・クラスに昇格した実績を持つ。

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16年 CHÂTEAU PAVEIL DE LUZE シャトー パヴェイユ ド リューズ(CS80%、M20%)
6世代に渡り家族経営を貫いているシャトー。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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